2-1.略歴
- 1966年 京都市生まれ
- 1991年 東京大学法学部卒
- 1993年 英国ランカスター大学修士号取得
- 1999年 英国ランカスター大学博士号取得
- 2000年 英国インナー・テンプル法曹学院入所
- 2003年 英国インナー・テンプル法曹学院バリスタ(法廷弁護士)となる
- 2008年 英国オックスフォード大学欧州法比較法研究所客員フェロー
(写真は2003年)
2-2.所属学会
所属学会:
比較法学会
法制史学会
軍事史学会
2-3.研究分野
英米法
イギリス法
イギリス法の方法論と比較法
2-4.研究概要
▽イギリス法研究成果の発表
- 『イギリスの司法制度』東信堂2009年3月
- 『イギリス債権法』東信堂2010年10月
- 『イギリス憲法Ⅰ 憲政』東信堂2013年5月(憲法九条問題の解決策を探った一つの方法論的到達点である)
- 連載「イギリス刑事司法の動き」季刊刑事弁護50号~64号(2006年~2011年)
▽伝えたいイギリス法の魅力
- 歴史的継続性⇔歴史的断絶性(例、近代日本法と中世日本法の断絶)
- 私法と公法の差が小さい
- 通常法の非常法に対する優位
- 「イギリス法の精神は自由である」
- 「イギリス法は強さ故に義務を課す」など
2-5.研究の筋道
【初心】学生時代~留学初期:憲法九条問題の解決
出発点、学徒動員世代の父と学童疎開世代の母
外部組織の駒として憲法九条を変える義務感を持ち司法試験に合格した先輩との出会い
- →「このまま突っ走ってはいけない」
- →内的な思想の必要性の実感
- スウェーデン平和研究学生の警告=「違憲の軍隊が一般社会から孤立して存在していることの危険性」
- 一般イギリス人の憲法九条の文面への反応=「やりすぎ」
- →「陸海軍を神格化された天皇に直属させることで、軍隊を理性的な憲法秩序の上に置いた大日本帝国憲法も、あらゆる戦力を違憲として憲法秩序の外に置いた日本国憲法も、やり過ぎの点で大きな違いはない」との問題意識を持つ
解決への方法論:
まず憲法九条問題の解決に必要な学識=①国際関係および国際関係史、②憲法、③日本憲政史
【イギリス留学修士レベル】
上記①の追及で、大学時代の経験から日本はアメリカの影響が大き過ぎると思い、まず歴史的に七つの海を支配し国際経験の豊富なイギリスで国際関係、国際政治、戦略研究を学び、修士論文としては国連平和維持活動を選んだ。
▽思想、哲学に流れやすかった私を、指導教官がグイッと実証研究へ向けた。
【イギリス留学博士レベル】
修士論文の発展の方向性として、連合国による日本国制改革の客観的研究の土台をつくる目的で、カンボジアを例にとった崩壊国家再建の国連(連合国)を通した国際支援についての研究に発展させる意図であったが、ランカスターの指導教官およびオックスフォードの潜在的指導教官双方の理解を得られず、結局、学籍をランカスターに置いたまま、拠点をオックスフォードに移し、『カンボジア紛争に対する国連の対応』で内戦を自由選挙で解決する手法の事例研究を行った。
同時に故鴨武彦教授が米国留学当初ホッブスの『リヴァイアサン』を原典購読した先例に倣い、オックスフォード在住のターナー先生から古代ギリシャ語を学び、アリストテレスの『政治学(国制学)』を原典購読。
- ▽ターナー先生の古代ギリシャ語講座で、戦争世代のイギリス人がプラトン(ソクラテス)の国家をナチス・ドイツと重ね、当時のイギリスの立場を
アリストテレス
- 的に正当化する(民主主義を良いとは言わないが悪さの程度が低い)姿に感銘を受ける。
- ▽①国際関係の研究の成果として、各国軍が国際社会の警察としての役割を果たすべき時代の潮流の認識
- ▽③憲政史として大日本帝国の自己崩壊原因の実証的研究の必要性の認識
- ▽②
古代ギリシャ語とプラトン・アリストテレス研究
- の成果として、またイギリス滞在中に見た総選挙の結果としての政権交代を見て、法律学的な憲法学を超えた、立憲主義市民国家論の必要性の認識
- ▽②その具体例として現代イギリス憲法および憲政の研究の必要性の認識
【イギリス留学法律学習期】
イギリス法の学習
- ▽法学部時代に戻り、私法と公法の垣根の低い英米法の特徴から、私法が基礎で、公法が応用であるとの認識を持ち、イギリス私法に学習の力点を置く
- ▽日本近代憲政史の失敗の原因の追究の結果として、軍隊に対する刑事司法の甘さを認識していたので、現代イギリス刑事司法に関心を強く持つ
2-6. 今後の研究テーマ
『イギリス債権法』に続く、『イギリス信託・物権法』
『イギリス憲法Ⅰ 憲政』に続く、『イギリス憲法Ⅱ 人権』
博士論文当初からの未完の課題、崩壊国家の再建のための国際支援
これは日本も崩壊国家に近似するという現状認識にもとづく。
憲法九条は禁治産処分に比すべき禁治軍処分、日米安保条約は国際的成年後見制度である、との現状認識に立脚する。
解決の糸口は、イギリスの名誉革命(外国君主の軍事介入を要請して憲法改革を実行した)にある。
2-7.今後の目標
日本が憲法九条問題の解決へ向けて正しい道を歩めるように、その方策を示すことは、『イギリス憲法Ⅰ 憲政』東信堂2013年5月で一つの到達点を見た。
残るのは、その実践へ向けての広報的、教育的活動である。
また、憲法九条問題を超えた、別の問題について、イギリス法の視点やイギリス法の方法論から解決策につながるものを探求することも、新たな課題として残る。
今に生きる歴史的な日本法というものの再発見もその一つである。